Dean Shimauchi Translation
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字幕翻訳者 の戯言 アーカイヴ     91          < リストへ >
荷車の歌
 1959年制作のプロレタリアート文学的社会派大作。 2007年東京FILMEXで上映。明 治、大正、昭和を生き抜く一人の女性の生き様を通して、より良い明日への希望と人間らしい生き方への賛歌を歌い上げるこの作品。私の祖母より20歳ほど年 上の人が主人公の話なのでそんなに昔の話とも思えないですが、しかしまあ女性の社会的立場の低いこと・・・。

 主人公セキ(望月優子)は奉公に出され、プロ ポーズされて嫁ぐと言った ら勘当され、奉公先にも縁を切られ、嫁ぎ先の姑にはののしられ、いきなりすごく大変なのです。姑が意地悪というのはよくある話ですが、この映画のお姑さん はとてもプライドが高い貧乏人、という最悪の部類。祖先は平家の落ち武者で、何代か前は苗字をもらうような働きをした名家(?)だったが、旦那さんの放蕩 で金がなくなり落ちぶれた後は二十 後家に三十後家を重ねて息子可愛いやと我慢に我慢を重ねた苦労人。苦労人なのはエライんですが、その苦労の人生からくる恨みつらみを嫁に向けて集中砲火。 自分は大変だったから嫁はもっと大変に、という復讐心に満ちた余生ですね。この映画は、そういう怨念の悪循環を断ち切ろう、というテーマを持っているので 嫁と姑は和解はします。でもそのためには嫁の献身と並々ならぬ「許し」が必要になるので、見ていて「割に合わないなあ」と思いました。でも確かに許すほう の器が大きくないと、終わらないですよね。

 苦労といえば、この主人公は生活環境が悪くてなかなか歩かない娘を心配して《巡礼》にでる、という・・・。で、巡礼の結果娘は歩くようになり、はつらつ とした子供に育つのですが、何しろ巡礼で物乞いをしたほうがいい物が食べられて、姑のストレスも無く母乳も良く出て子供が健康になった、という、すごい話 な訳です。凄い世界ですね。

 また「明日の女性」の象徴としてお嫁さんの長女オト代(左幸子)が限りなく理解深く行動的でポジティブでしかも根に持たない、というスーパーウーマンと して登場します。このような超越した人格が出現しないとこの「悪循環」は終わらないだろう、と言うことでしょうか。この映画の話のスタートは1890年代 ですが、それから120年たって私たちはこのようなやり場のない不公平感が産む怨念の悪循環から自由になったのでしょうかね。
 「荷車の歌」でもう一つ考えさせられるのが三國連太郎扮する茂一。主人公の夫である彼は、求愛するまでは限りなく伊達男なんですが嫁いで見ると意地悪 な母親寄り。家の外と内で二重人格を持っている訳です。妻を思いやらないでもないし悪意のある人でもないのでよけい始末が悪いが、一般的には母の言いな り。母が歳なので今まで自分の面倒を見てくれた母の代わりに嫁をとって家の面倒を、という感性なわけで すな。一生懸命働くのは感心なんですが、そこのところ以外は「男の子」のままである、という・・・。挙句の果てに死んだ母親代わりに婆の妾(浦辺粂子=と てもいい演技で気持ち悪い。さすが名女優)まで作っ て・・・。彼も姑も威張る基盤は何もないのに威張るんですよ。見ていて情けないですね。  主人公はそのような情けない人たちの面倒を見ながらの人生なので山あり谷ありです。

 さて、この映画では荷車引きがかなりの高給をとれた昔からしだいに馬引き荷馬車、トラックへと産業が変わっていく様なども興味深く描かれていますが、大 変なのが昔の日本語でした。広島弁も大変だけど「こらえてつかあさい」なんて別に広島弁じゃないことばでも、「我慢」「勘弁」「許す」といった複数のニュ アンスがTPOに応じて表され、特 定するのが結構骨でかつ楽しくもありました。forgiveなのかspareなのかendureなのかbe patientなのかhave a heartなのかdeal with itなのか。時と場合に応じて変わります。祖父母が広島出身なので、ああ、あんな喋り方をしてたなあ、とちょっと昔を懐かしんだりもできました。
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