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字幕翻訳者 の戯言 アーカイヴ     94          < リストへ >
戦前戦後のアニメーション
 今回翻訳した作品は「桃太郎の海鷲」「バグダット姫」「蟹 満寺縁起」「茶目子の一日」「煙り草物語」「茶釜音頭」「お蝶夫人の幻想」「三匹の小熊さん」の8本。いずれも日本のアニメーション史を語る上で欠かすこ とのできない、重要な考古学的かつ学術的価値の高い作品です。影絵アニメーションの「蟹満寺縁起」と「お蝶夫人」はそのまま「マンガ日本昔話」の一部の演 出手法につながっていくものがあり、興味深い。そういえば「アニメ」をまだ「マンガ」といっていたのはそんなに昔のことではないんですね。近くて遠い70 年代です。

 「三匹の小熊さん」は画面設計が微妙に西洋風で、朝はミルクに砂糖を入れたものを飲んでそれでお終い。ベッドルームがある洋風の家に住んでいる熊さんた ちと失踪した子アヒルを探す父アヒルの話です。涙にくれる父アヒルがこぼした涙がボウル一杯に溜まっていて、そのボウルに「アヒルサンノナミダ」と書いて ある。ギャグなのか?それとも解説的親切心なのか?狙いは何であれ、わざわざ「アヒルサンノナミダ」と書いてあるところが妙に面白い。

 「お蝶夫人」はマダムバタフライの翻案なのですが、三浦環によるオペラが影絵アニメとともに物語を語ります。最後に一言台詞があって、それが恥に生きる より操に死なんという短刀に書かれた文章を受けての台詞で「モットマシヨ!」というもの。この台詞の発音が現代人には謎なものがあり(なまってるのか?) 聞き取りに苦労しました。日本語の発音ってエラク変わってるよな、ということは20年前の映画を翻訳するときにもはっきり感じるのですが、1940年製の 映画ならなお更ですね。

 「茶釜音頭」は部分的に発見された二種類のフィルム(16mmト35mm)をつなげて修復したもので、音声トラックが不完全。だから台詞があったりな かったり。この作品ではタヌキが和尚さんをバカすのですが、タヌキも和尚さんもとっても力の入ったアニメーション演出によって歌舞伎の見得を切ります。そ こにそんなに枚数使わなくても、と思うくらい入魂の見得。これって、やっぱり日本文化のDNAにがっちり刷り込まれた歌舞伎感覚の発露なのか。その後のア ニメも見得切りまくりですが、その源流なのか。興味深いものがあります。

 トリックアニメとして「ロジャーラビット」的な「煙り草物語」には「このアマッチョめ!」とか、困ってしまうような台詞が出てきます。「アマッチョ」っ て・・・。

 ふにゃ〜ん、としたアニメーションが楽しい「バグダット姫」は、そこかしこに杉浦茂的なキャラクターと芝居が散見できます。「バグダット姫」は1948 年。杉浦の影響は果たして本当にあったのか?

 最後に「桃太郎の海鷲」について。企画:海軍省報道部、監督:瀬尾光世というこの作品。戦後民主主義的な感覚で見ると、う〜ん、というものではあります が、グリフィスのクロスカッティング編集を称えるのに「国民の創生」を見て、う〜んKKKかあ・・・、と思うのと似てますね。「桃太郎」はアニメーション としてはすごいんですよ。ほとんど瀬尾氏が描いたというあたりからして尋常じゃない。オープニング、桃太郎の空母が荒海の霧の中に現れるところなんか、 トップガンですよ。素晴らしい美術感覚。手旗信号ならぬ耳信号を出す兎とか、楽しい演出。この兎が掲げられた旗を見上げてニヤリ。このニヤリがすごく可愛 くないんですよ、キャラクターの造形は可愛いのに。日本人だよ、という表情をしてます。何か思想を感じますね。手塚治虫みたいに安易にディズニーのキャラ クターを使わないあたりが。でも敵の鬼はモロにカリカチュアなんですよ。皆ポパイのブロートの演技をします。頭の悪い乱暴者のカリカチュアであるブルート をアメリカ人のカリカチュアとしているわけです。まあ、プロパガンダ映画なので・・・。鬼が島艦隊殲滅の後、微妙にアレンジされた「星条旗よ永遠に」が流 れ、 壊滅した艦隊を映すシーンがあります。滅び行く者への哀愁を感じるシーンですね。プロパガンダ映画で哀愁なんて感じててていいのか!とちょっと心配になる くらい思い入れたっぷりです。そこがやっぱり平家滅亡のお話が大好きだったりする国民性なのかな。面白いものが見え隠れする作品です。でも何と言っても白 眉は爆撃機、雷撃機の空母からの発着シーンですかね。マンガ的な表現もありますが(甲板から落ちそうになった爆撃機を兎の甲板員が手で止めるとか)、入魂 のアニメーションで描かれています。ある種、宮崎駿的機械と機械操作への思い入れの萌芽みたいなものを感じさせるものがあります。アニメーションという、 「描かなければ何も存在しない」メディアに魂をこめる作業は、やっぱり「思いいれ」なんだ、と納得します。

 あ、「茶目子の一日」を忘れてた。すごく楽しい、シュールな感覚に満ちたミュージカルです。一番のお気に入りでした。「夜が明けた 夜が明けた 夜が  明けた 夜が明けた・・・」頭の中であの歌がとまらなくなりました。朝は納豆売りのおばあさんの呼び声が、とか文化的にも興味深いですよね。もちろん歯磨 き粉はライオンです。
 
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