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字幕翻訳者 の戯言 アーカイヴ     112          < リストへ >
  20世紀少年第一章 其の一
 「ぼくたち」の空想科学冒険漫画が映画になりました。 いろいろんな注目を集めるであろう「20世紀少年第一章」は、堤監督が徹底的な「完コピ」を狙っているだけあって、「おお、マンガみてえだ」的な興味は軽 く満たしてくれます。セリフもそのまんまでしたから、字幕翻訳は気を遣いまくり。ずーっと前から覚えていたような台詞を、どう英語にしようか、と頭をひね るのはすごく楽しい経験でした。

 「キャラは似ているのか 」といった映画の本質とは関係のない部分も、気味悪いほどマンガの 印象とそのまんまな配役があり、ド胆を抜いてくれます。そういったお祭り的要素は実にソツなく映像化されていて、スピードの速いイベ ント映画としてとっても楽しく仕上がっております。マンガと比べて どうなんだ!というところだけでなく、映画の表現としてどうなんだ!という部分もいろいろ頑張っているので、この映画は「マンガと映画の表現」という文脈 で表現を語る上でのサンプルにできるかもしれません。

 マンガ「AKIRA」では大友克洋は明らかにカメラ移動を意識 してコマを割り、スピード線を引いてましたが、そのような疑似三次 元的な表現を獲得した高度な漫画表現と映像との関係性を、この映画 もかなり精密に考慮して撮影編集されています。アン・リーのハルク に突然コマ割が現れる、とかいうのとは違った方法でマンガを意識した映像を作っている。もちろんウォシャウスキー兄弟的なアニメの影 響下にある表現とも違う。昔は逆だった訳ですね。映画を意識して漫 画を描いた、という事と二次元的な抽象的な表現の相乗効果で発展してきたマンガ表現が、今、逆に映像によって再現されようとしている。そのようなポップカ ルチャーの面白い歴史的逆転現象も巧まずして孕んでいます。

 何しろ「20世紀」とか「AKIRA」のようなリアリズ ムに根ざして表現されたマンガのコマ割というのは現実的なシーンを どのように(あまり)連続性のない二次元の絵として切り取るか、と いう表現であり、それは運動するイラストとしての進化を遂げたマンガ表現を逆に「映画的」な画の連続として捉えなおした表現であった訳ですから、ハッキリ とカメラ移動を意識させるコマ割であれば、映 画「20世紀」はリヴァースエンジニアリング的にその「全体のカメ ラ移動」を再計算して撮影する、という難しいことを明らかに企んだ結果得られたショットがあるわけなんです。ストーリーとは何の関係もないんで、多くの人 にとってはどうでもいいことなんですが。

 さて、三部作なんかでは収まりきれない内容を持つマンガ「20世紀少年」 は、20世紀少年である私としては外せない傑作マンガです。自分の自己形成期とだぶるテーマを扱った作品はどうしても客観性そっちのけで楽しんでしまうの で、批評的には注意しないといけないのですが 、ここは戯れ言の場であって、批評の場ではないのでドップリ主観的でOKですね。

 20世紀少年と言えば、なんと言ってもその陰謀史観に 貫かれたパラノイアな世界観が魅力なわけですが、そのヒナ型であっ たのはもちろん忌まわしい一連のオウム真理教事件ですね。連載が始 まったのはオウム・ショックからまだ日も浅い1997年。日本の9 .11であったオウム事件は、宗教ヲタクと自己啓発セミナーヲタクとかオカルトマニアのような人たちの集合体が知らないうちに日本中の「何かが違う!」 と思っていた人たちを集めて、ショッカーみたいな行為を働くに至っ たという日常の脆弱性を絵に描いたような事件でした。「その人たち 」が本当は皆「お隣さん」みたいな人たちだったという恐怖、下手を すると本当に一緒に小学校に通っていた「トモダチ」だった、という 衝撃。そして彼らを導いた不安と不満の根源はすべて私たちの社会の輝かしい(ような妄想を私たちに与えていた)発展の裏側にあった、 という衝撃。キツかったですね。僕たちの進歩と調和の世の中の着地 点はアレなのか!というショックからそう簡単に立ち直れるものではないし、実はそれは終わってなんかいなくて、続いている、という。

  マンガ「20世紀」の原作者たちはそのことを十分理解した上で、「 オウムの悪夢から醒められない世界」を描き上げる。オウムに見られ た表現(踊りとか歌とかアニメとか刊行物、発言、思想信条も含めて )がすべて趣味の悪い三流の「イミテーション」であったことが、実 は戦後日本の不気味な集大成だったのではないか、という居心地の悪い推論もマンガ「20世紀」は大胆に行っています。「マネのマネが 一番」という。

 この批判的陰謀史観の部分がとてもシンクロするマン ガ作品がありまして、その作品は「アメリカがベトナム戦争に勝って しまった悪夢の世界」を中年になったヒッピー世代のスーパーヒーロ ー達(及びその前の“古き良き”世代)の悲哀を通して描きます。その作品とは言わずと知れたアラン・ムーアの「WATCHMEN」そう「ウォッチメン」で す。

 猛烈に長い文章になっちゃったので、残りは次回で。


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