Dean Shimauchi Translation
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字幕翻訳者 の戯言 アーカイヴ     135          < リストへ >
シューシャイン・ボーイ
 2010年9月「シューシャイン・ボーイ」ソウル国際ドラマ賞でグランプリ獲りましたね。

 それを受けて先日再放送があったようです。ソウル・ドラマ賞の審査に出されるのは英語字幕版が、それともハングル字幕版か。そしてハングル字幕版は英語 字幕から作られるのか、それとも直接日本語の台詞から作られるのか 。日本の国際ドラマフェスティバルでは英語字幕もはいってる、というのを上映するのですが、果たしてソウルはどうなんでしょう。当事務所でやった英語字幕 がついているのか・・・何にしても、興味深い作品であったことは確かです。

 これは戦中派と戦後世代の断絶と理解は、親父と息子の関係の物語でもあったはずで、70−80年代に積極的に忘却の彼方に葬られた戦中、戦後の記憶を証 拠を、忘れられるはずもない当事者の問題として振り返るドラマです。一面の焼け野原であった東京、という今となっては想像を絶する光景。

 私はその焼け野原に20年程経ってから産まれたのですが、もちろんそこは既に焼け野原ではなかったわけです。しかし飽和し消えていく「高度成長期」の、 しかし「消費文化以前」の東京がそこにはありました。それは復興期の東京の姿を隠蔽し続ける街の姿でもあったと思います。

 「シューシャイン・ボーイ」の中で私個人にとって象徴的なのは、都電の停車場が、都電が新宿大ガードをくぐれないためにガードのあっちとこっちに分かれ てるのだ、というくだり。そう、都電があったんだよなあ、という、これも今となっては想像するのも大変な光景ですよね。青梅街道にも走ってた し、新宿通りも、青山の方にも築地の方にも、皇居の周りも、色んな所に軌道があった訳です。

 私の初期の記憶の一つに「新宿から独りで都電で銀座に出かけてしまう母を見送りながら泣いた」というのがあって、それが私の都電にまつわる唯一の記憶で もあるんですが、母はただ買い物に銀座に行っただけなんですね。 でも「行っちゃう」と思って泣いた、という・・・何歳だったんだろう、私は。

 調べてみると都電で新宿から銀座方面に行ける11系統というのは1968年二月に全面廃止されています。ということは私は2歳でしたね。なるほど都電の 記憶が無いはずです。

 ほとんどの路線は私が生まれて数年以内ないしは産まれる前に廃止されているわけです。乗用車を所有する人と私鉄/地下鉄電車網の発達とともに廃止され、 路線バスに置き換えられていった路面電車という「都市交通の歴史的なある局面」。その最後の瞬間みたいな時に私は幼少期を過ごしたのだなあ、と「シュー シャイン・ボーイ」を見た後、感慨にふけったのでした。

 もう少したって記憶がもう少し確かなものになってからも、新宿の西口はなんとなく「できたての建物」と「まだ何も建っていない土地」が共存していて、駅 のターミナルの前には傷痍軍人がアコーディオンを弾いていたりしたわけです。両親は「傷痍軍人じゃないんじゃないか」(つまりフリだったんじゃないか)と 言ってましたが、何しろ傷痍軍人である、ということで街頭でお金を集めることがまだできた、ギリギリの時期だったんじゃないか。

 急速に、そして意識的に忘却される敗戦日本が、私の幼少期にはまだ新宿に行くとあった、ということです。西口はまだ(比較的)高いビルが淀橋浄水場方面 に向かって二列くらいあって、その向こうは空!みたいなもんでしたからね。

 1971年に京王プラザホテル(昭和40年代世代にとっての東京タワーです)が建ってから急速に変わるわけですが。その前の、まだスカスカしてた新宿。 「戦後」が目に見えて消去されていく情景の個人的に持ちうる最後の記憶。

 なんか、近いなあ。

 「シューシャイン・ボーイ」は復興と再生に人生を賭けた世代の男と復興後の灰色の街に産まれた世代の男の確執と和解と絆の再生の物語なのですが、それぞ れの男には帰るべき家、というような潤いを 持っています。そこに与えられた潤いの正体が、極めて昭和的だなあ、と思ったのでした。その潤いとは・・・「家に帰ると星由里子と安田成美が待っていて、 無条件で許してくれる」という。「スナック」的だなあ。実際に劇中スナックに行けば余貴美子もいるわけですが・・・。

 最後にはお母さんが許してくれる、てのがいかにも昭和的であり、それがこの物語には実に適切な構造なのだと思いました。

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