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字幕翻訳者 の戯言 アーカイヴ     143          < リストへ >
ヒミズ
 園子温監督の最新作“ヒミズ”がベネチア国際映画祭の賞取りレースに参加!

 2011年8月31日開催のこの映画祭で現地時間9月6日に“ヒミズ”は上映となります。最新作って・・・前作「恋の罪」すらまだ公開前なのにもう最新 作 は世界プレミア。
この状況はどういうことなのか。映画興行の遅さというか、 いかんともしがたいですね。

 映画黄金時代(質ではなくて量の)にはもっと映 画が量産されて全部ガンガン公開していたという歴史があります。活動写真時代などは毎週同じスターの映画の新作!という事だったわけでしょう。

 それと較べるとやはり現代において映画というメディアが落ち着いた場所を考えると興味深いと ころですね。もちろん尾上松之助の昔はテレビなかったので、連続活劇という 上映形式で撮った作品を小分けして毎週コヤにかけられたわけです。
 音声ないからスタジオ作業もないし、CGもないし・・・時間かからないで凄まじいペースで回せたわけですよね。連続活劇の形態は1950年代まではあっ たと思うのですがやはりテレビが同じ事始めたらなくなっちゃいましたね。

 で、何の話かというと、今の興行の世界は園子温監督の創作速度についていけてないですね。 一年も待つ、とか・・・あり得ないです。特に“ヒミズ”は正に“今”見るべ き映画なので(10年経っても素晴らしいだろう、というのはまた別の話)本当に来年まで待たされるのは悔しいですね。
また一足お先に海外で話題を集め て洋行帰り、というパターンになるわけです。

 さて、来年公開の“ヒミズ”の 内容に関しては、例によって何も言いません。が、今回はマンガ原作が存在するので話についての推測は誰でも出来ることはできる。という訳でマンガの話を (笑)。

 マンガのヒミズは、古谷実の手によるもので内容は衝撃的です。21世紀明けてすぐに描かれた作品としてはやはりその時の世界が孕んでいた暗さを湛えてお り、しかも90年代後半の混沌をも内包しているので・・・暗い 。古谷実といえば多くの人は“行け!稲中卓球部”の作者という認識だと思うんですね。あの中学男子の行動的聖書というか・・・あれほど20世紀後半の日本 で10代前半の男子でいるということを的確に捉えたものはあまりなかろう!というほど稲中は素晴らしいギャグ漫画なわけですが“ヒミズ”はエラク毛色が違 います。

 “ヒミズ”最初は「14歳くらいの少年達が舐める辛酸と不幸」をネタにしたほとんどギャグ漫画として始まります。どうやら連載当初は「無謀な夢」と「し がない現実」の埋めようの無い溝の中の暗闇を嗤う、というテーマだったわけですね。しかし主人公が世界に対して挑戦挑発否 定を現す独白から始まるこの漫画がただのギャグであるはずもな い。でも「語り」がギャグなんですね。というか“漫画的文法”というか。古谷が“稲中”で昇華させた“文法”が適応されているわけです。

 「絵を描く」と言う行為は「意識の具象化」だと思うので、なかなか変えようとして変えられるものではないわけです。恐らく「喋り方」と似た理由で。いき なり他人の話 し方で話し続けることは訓練なしではできないわけです。恐らく絵も同じでし ょう。

 “ヒミズ”連載当初、恐らく作者も何を書き始めたのかハッキリ解ってなかったのかもしれませんね。“稲中”で獲得した漫画文法で手に負えるだろ うと思って始めたんでしょう。途中で、単行本だと一巻の後ろの方で、絵が全然変わります。ここでハッキリこの作品が何なのか、作者が理解したんでしょ うね。絵の質も変わるしコマ割も変わるし、コマの連続が現すものも変わる。 ここは週刊連載でリアルタイムに体験したかった!作者が思いもかけない方向 に進み始める瞬間というのは貴重な、ワクワクするものでしょう!
私はこの頃 あまり漫画読んでなかったので、残念ながら逃しましたが・・・。

 絵も新しいものを獲得し ようという模索の過程が見られてすごくエキサイティングです。土田世紀的な絵が入ってきたり。でも土田世紀よりデザイン的に洗練されている。線が少ないの に三次元的でリアルな人物像。

 “稲中”がギャグだった影響か、古谷実の絵の話ってあまり聞かないですが、すごく上手いですよね。人物も構図も背景も。古谷の描くキャラクターの顔は気 持ち悪いですよね。「気持ち悪い顔」でキャラクター作ってそのまま可愛くならずに描き続けられるってのは実は凄い ことなのです。漫画って絶対にある程度類型化しないと描き続けられないですから。これは手塚治虫に端を発した(いや、他にもいるんでしょうけど、それが一 番わかりやすい)「見かけが日本人じゃない日本人」という問題に立ち返 っていくと思います。手塚さんはディズニーの模写とか終戦直後の現状否定/自己否定とかいろんなものがグチャグチャと渦巻いてあーいう絵柄になったんで しょうが 、その後なかなか漫画やアニメーションが「日本人ぽい日本人」を獲得するに は時間を要しましたね。劇画の方はいい線のがあったと思うんですが・・・

 手塚を断ち切ったとして広く認識される漫画の登場は大友克洋まで待たなければならなかったわけです。で、古谷実ですが大友的な絵柄もあり(背景なんかと 特に)見事に消化されたヤングマガジンの先輩の影響がそこには見られる。表現的にも実に見事な漫画“ヒミズ”です。

 さて映画“ヒミズ”は漫画と同じか違うのか、という疑問にどう答えるか。内容に触れないので答えませんが(笑 )あの物語が、もっと大きな意味を持って映画になったぞ、というところでしょうか。古谷実も園子温も強烈な個性の持ち主なのでぶつけるとどうなるんだろ う、と想像もできなかったのですが、すごい化学反応が起きましたね。もちろん園監督が自分の中から湧き出るものを入れないはずがないので、 期待できますよ!とりあえずベネチア行ってらっしゃい!ということで。「頑張れ!」です。

 それにしてもこの間、5月に“新作”でカンヌに行ったばかりですよ、園監督。

 すさまじい。

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