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字 幕翻訳者の戯言 アーカイ ヴ     165          < リスト へ >
 野 火
塚本晋也監督の「野火」が第71回ヴェネツィア 国際映画祭のコンペティションに招待されました。会期中の様子は「野火」のFBで報告され、ヴェネツィ アの次の正体先であるトロント国際映画祭の様子も続けて報告されています。
 https://www.facebook.com/NOBI.MOVIE

トロントの次は釜山ですね。バラエティ誌では「That’s not war, that’s torture(これじゃ戦争じゃなくて拷問だ)」と書かれていますが、言い得て妙です。記者はあまり親切じゃない意味を込めて書いたわけですが、期せず してこの映画の本質を見事に言い表したと思います。腹に堪える映画ですからね。地獄のような戦場に、ま さにそこにいるのだという感覚。それはそれは凄惨なものです。監督はFBでトロントの上映を指して「上 映環境が良かったせいか上映後の(観客の)疲弊は昨日以上のようだった」とおっしゃってますからね、ま さにそこを狙ってるわけですよ。

公開前なので、もちろん内容については触れませんが「野火」は大岡昇平の小説を原作としており、同名の 白黒映画が市川崑監督の手によって1959年に撮られています。だから内容を推し量る材料はいろいろあ りますが・・・もちろん書かれた活字の単なる映像化では済まないのが塚本映画。1ショットにまとめ ちゃった部分もあれば、猛烈に膨らませた部分もあります。南洋の青空の下、というところで既に塚本映画 らしからぬ外見を持つ「野火」ですが、しっかり塚本 的なものの上を疾走していきます。

思うに、塚本映画で描かれてきた都市の閉塞と狂気に満ちた強迫観念を生み出す精神的土壌は、実はこの時 代からジャングルの迷路をさまよう兵士たちを作り出した社会の中に既にあったのではないか。見ながらそ んなことも考えたくなる、地獄のジャングル映画です。

原作ものの翻案ということに関しても、考えさせるものがありました。
昨年の今頃はイアン・コンドリー著「アニメの魂」という本の翻訳作業に追われていましたが、その本の主 題の一つが波及していく文化の運動ということでした。掻い摘んで言えば、脚本に刺激された監督が、脚本 が残した余白を創造性で埋めるようにコンテを描き、コンテが残した余白をアニメーターたちが創造性で埋 めるように原画をそして動画を描き、描かれた絵が残した余白を埋めるように声優が声をあて、音響が、音 楽がつけら れ、完成した作品が残した余白を埋めるように関連商品が作られ、ファンが二次創作をして、ついには作品 に対する愛着が残した余白を埋めるようにファンたちがプロになって自分の作品を作るという、国境を越え て広がる創造性の誘爆連鎖反応、そんな論が展開される本です。

「アニメの魂」で得た視点から今回の「野火」を見たとき、恐らくそれに近い創造性の爆発があったのでは ないか、と思わずにはいられませんでした。
つまり、大岡昇平の「野火」を読んだ塚本監督が、活字が残した余白を湧き上がる想像力で埋めた。それが 今回の映画「野火」だな、と字幕作業で何度も見ながら感じた次第。原作者が敢えて活字にしなかった地獄 が、ここにあります。
「地獄の黙示録」では「闇の奥」への旅路にオペラ的な仕掛けを必要としましたが、「野火」では密林の中 を歩いていくだけ。角を曲がればもう普通に地獄です。

日本では東京フィルメックスがお披露目になり ます。

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